モノローグ・ログ4

掲載日:2010-01-14

夢の中の幻想

 夢を見せて
 甘く儚い優しい夢を

 夢を見せて
 苦く確かな歪んだ夢を

 足の裏に感じる冷たい過去
 触れた手に感じる暖かい現在
 この目で見つめる揺れる未来

 どんな現実だっていりはしない
 欲しいのは夢の中の幻想

 さあ、夢を見せて
 永久なる夢を 覚めることなき夢を

だからこそ

 あなたが好きです
 胸を満たすこの想いは真実です

 あなたを忘れるでしょう
 いつか訪れる未来の予感も真実です

 変わらない想いがあるなんて信じてなんかいません

 浜辺に書いた文字が一瞬で波にさらわれてしまうように
 この想いもあっさりと時間に溺れてしまうのでしょう

 だからこそ私は叫びます
 恥も外聞もなく声の限りに大声で叫びます
 この想いが消えてしまうまで ずっと ずっと

 あなたが好きです 大好きです

永遠

 それはとても幸せな日々でした。
 温もりと優しさに満ちた、美しい日々でした。

 私は何かを間違ったのでしょうか?
 いいえ、そんなはずはありません。
 私はあなたを愛し慈しみ、全てを捧げていたのです。
 あなたも私を愛し慈しみ、全てを捧げてくれたはずだったのです。

 どこで狂ってしまったのでしょうか?
 いいえ、私達がすれ違うなんてありえません。
 私はあなたを理解し信頼し、全てを預けていたのです。
 あなたは私を理解し信頼し、全てを預けてくれたはずだったのです。

 どうしてあなたは私をあんな目で見たのでしょうか?
 どうしてあなたは私へあんな女を見せたのでしょうか?
 どうしてあなたは私にあんな言葉を投げつけたのでしょうか?

 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして――どうして?

 あの女があなたを甘い言葉で惑わしたのですか?
 あの女があなたを妖艶な視線で惑わしたのですか?
 あの女があなたを魅惑的な肉体で惑わしたのですか?

 あの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女があの女が――あの女が?

 あなたの優しい声は私のものです。
 あなたの穏やかな笑顔は私のものです。
 あなたの柔らかな温もりは私のものです。

 あなたは私だけのものです。

 安心してください。
 惑わされたあなたを見捨てたりしません。
 救い出してあげます。
 惑わされたあなたの目を開かせてあげます。

 さあ、こっちを見てください。
 さあ、この手を掴んでください。
 さあ、この声を聞いてください。

 嫌なのですか?
 それ程に囚われているのですか?
 なんて哀れなのでしょう。
 なんて痛々しいのでしょう。

 私はあなただけのものです。 

 どんなことをしてでもあなたを助けます。
 どんなことをしてでもあなたを解放します。
 私の全てをあなたのためだけに。

 何を震えているのですか?

 大丈夫です。
 あなたは惑わされただけなんです。
 あの女に惑わされただけなんです。

 何を怯えているのですか?

 大丈夫です。
 これ以上あなたを傷つけさせません。
 これ以上あの女の好きにはさせません。

 何を泣いているのですか?

 大丈夫です。
 これであなたは私のあなたです。
 これであの女はどこにもいません。

 どうしてそんなヒドイことを言うのですか?

 こんな女を抱きしめないでください。
 こんな女に縋りつかないでください。
 こんな女の名前を呼ばないでください。
 こんな女へ口づけを落とさないでください。
 こんな女のために涙を流したりしないでください。

 何故そんな目に私を映すのですか?
 何故そんな表情を私に向けるのですか?
 何故そんな言葉で私を拒絶するのですか?

 もうあの女はいないのに。
 もうあなたを惑わす女はいないのに。

 それとも、まだ囚われたままなのですか?

 救います。
 あなたを救います。
 そのためならば何だってします。
 温もりと優しさに満ちた美しい日々へ、戻りましょう?

 怖がらないでください。
 私が一緒にいるのです。
 ただ、幸せな日々へ戻るだけなのです。

 どうして謝るのですか?

 あなたに落ち度なんて何一つありません。
 あなたが謝ることなんて何一つありません。

 さあ、そんなに逃げないでください。
 私は怒ってなどいません。
 私があなたに怒りを向けるわけなどないでしょう?

 ああ、捕まえた。
 やっとあなた取り戻すことができた。

 もっとあなたの顔を見せてください。
 もっとあなたの声を聞かせてください。
 もっとあなたの瞳に私を映してください。
 もっとあなたの温もりを感じさせてください。

 そう、それでいいのです。
 やっとあなたとの日々に戻ってくることができました。

 これを永遠のものにしましょう。
 もう二度と引き剥がされたりしないように、――ね?

お前はどうする

 自分自身を哀れみたいなら存分に哀れむがいい
 この世で一番不幸だと嘆きたいなら大声で嘆けばいい

 楽だろう
 全てを投げ出して
 誰か手を差し伸べてくれるのを待つことは

 この苦しみは他人のせい
 この痛みは世界のせい
 自分のせいではない
 自分は悪くない
 そう叫ぶことがどれほど惨めで愚かなことか

 絶望の淵でうずくまり
 自力で抜け出そうともしない者に救いなどない
 それでもいいのなら己の悲劇に浸っているがいい
 そのような者は私には必要ない
 だが少しの間だけそこで嘆いた後
 這い上がって来るならば歓迎しよう

 常に強くあり続けることは難しい
 一時の嘆きなしでは立ち上がれない

 絶望の先に強さがある
 地獄の奥に力がある
 乗り越えろ
 つかみ取れ

 お前なら、できるはずだ

じゃあね

 さよならの代わりに贈る言葉

 次に会う時には笑えるように
 小さな魔法をのせて贈る言葉

 「じゃあね」

鈴の音

 ころころ落ちて
 ころころ転がって
 ころころ鳴り響く

 この想い
 鈴の音に乗って届くかな

供物

 女は笑う
 艶やかに笑う

 女は踊る
 軽やかに踊る

 赤い唇が妖艶に闇に光る
 裾をからげて白い足が闇に映える

 ――お前は私のもの
 甘い声で紡がれるのは呪縛の呪文

 ――お前は私だけのもの
 冷たい指で頬を撫でるのは戒めの証

 鈴が鳴る
 女の足首に絡まる鈴が鳴る
 楽しげな鈴の音が高く細く鳴り響く

 ――時が来たのだよ
 歌うように女は言う

 ――捧げものはお前
 深紅の瞳に哀れみをのせる

 ――可哀想な子、私だけがお前を愛してあげる
 手をとり女は共に踊ろうと誘う

 回る回る回る
 巡る巡る巡る
 女の笑い声と鈴の音が闇を支配する

 ――愛しい供物よ、私に誓うが良い
   傍にあると誓えば良い

 闇の中でも鮮やかに煌く深紅の光
 あらがうことなど思いつきもしなかった

 跪いて白く柔らかい女の手に接吻を
 言葉などとうに奪われた

 女は誓いにに恍惚とした笑みを浮かべ
 柔らかな仕草で立つように促す

 ――お前は私のだけのもの

 ささやいた女の声が、悲しく響いた

 愛してほしいなんて言いません。
 誰も愛することができないから。

 愛したいなんて言いません。
 誰かが愛してくれることはないから。

 どうか愛を下さい。
 誰かを愛し愛されたいから。

牢獄

 失ってかまわない
 だからひと時の夢をください

 手放してかまわない
 だからひと時の安らぎをください

 裏切られてかまわない
 だからひと時の愛をください

 限られていてかまわない
 だからひと時の自由をください

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