大好きなんだから、ね?

掲載日:2008-06-01

「なにやってんの」
「圭兄を落とす計画練ってんの」
「いや、それ本人に言ったら意味ないんじゃね?」
「じゃあ聞かないでよ。いじわるね」
「……」
「でさ、圭兄はどうやったら私のこと好きになってくれる?」
「本人に聞くなよ」
「本人以外に誰に聞くのよ」
「俺の友達とか?」
「もう聞いた。参考にはなったけど、どれ試してもムリだった」
「まさかとは思うけど、弁当作ってきたり、俺の目の前で転んだり、水こぼしたり、胸元開いた服を着たり、抱きついたりとかが、試したこと?」
「そうよ。それが効果的って聞いたんだもの」
「……」
「圭兄もいい加減私の魅力に気づきなさいよ。こんな可愛い子が好きだって言ってんのよ。鼻の下伸ばして受け入れなさいよ」
「や、お前みたいなの趣味じゃないし」
「失礼しちゃうわ。みんなは私のこと応援してくれるし、お似合いだって言ってくれるのに」
「それは多分おもしろがってるだけ。または微笑ましいだけ」
「なによそれ」
「俺も他人事なら応援するよ。でも相手が俺なら、受け入れるわけないじゃん」
「……ねえ、なにがそんなにダメなのよ。ホントに好きなのよ? 嘘じゃないのよ?」
「それは知ってるけどさ。もっと現実見ろよ」
「見てるわよ。だから誰かに取られないうちにがんばってるんじゃない」
「いや、年齢的なことで」
「たかだか六歳の年の差なんて、そのうち気にならなくなるわよ」
「たかだか……。ってかっさ、そりゃ、大人になりゃ気にならないかもだけど、今はまずいだろ」
「あら、どうして?」
「だってお前はまだ小学生じゃん」
「中学生よ!」
「あと一週間もすればな」
「そんな些細なことにこだわるなんて小さい男ね。そんな男は好きになる人なんていないんだから、私のこと好きになりなさい」
「なんでそんなに俺のことが好きなんだよ」
「だって顔がとっても好みなんだもの」
「……」
「もちろん中身も大好きよ。でも人間、外見も大切なのよ」
「あー、そうだな。外見は大切だな。ってことで俺はお前ムリ。好みじゃない」
「こんなに可愛らしいのに!」
「可愛らしくても幼すぎてムリ」
「あと三年もすればすっごく大人っぽくなってるんだから!」
「それまで俺にロリコンの汚名を着ろと」
「着なさいよ。傷ついたら私が癒してあげるから」
「いらん」
「あとで『やっぱりあの時ゲットしておくんだった……』とか言ったって遅いのよ!」
「遅いのか?」
「私はもてるんだもん。誰かと付き合っちゃうかもよ」
「付き合えば?」
「私は圭兄が好きなのよ!」
「だったら付き合わなきゃいいじゃん」
「私だってあと三年もこんな押し問答繰り返してたら、うっかり癒しが欲しくなるかもじゃない!」
「でも晴れて大学生になる俺は、明日から東京に行くんだし、新たな恋をはじめろって」
「いやよ! ってか何で遠いところに行っちゃうのよ。家から通えるところにしたら良かったじゃない」
「だって行きたかったし」
「……そりゃ、圭兄がやりたいことすればいいけどさ、寂しいのよ」
「寂しい?」
「とっても寂しいわ。毎日電話しちゃうくらい寂しいわ」
「ホントにするなよ?」
「わかってるわよ。私だって部活に入るし塾もあるし、暇じゃないのよ」
「そういや何部に入るんだ?」
「陸上部。短距離したいし」
「ああ、似合ってるな」
「ありがと。私もピッタリだと思う」
「まあ部活も勉強もがんばれよ」
「……圭兄も大学でがんばってね。でも私以外の女に優しくしちゃダメよ?」
「はいはい」
「もうっ! 真剣に言ってんだからね。東京行って可愛い子やグラマーな子とかにフラフラしないでよ。私がいること忘れないでよ」
「別に付き合ってもいないし」
「じゃあ今すぐ付き合ってよ!」
「やだ」
「いじわる!」
「そういや俺を落とす計画はどうなったんだ?」
「直球に切り替えたわ」
「いつも直球だと思うがな」
「さあ、私を好きになりなさい!」
「どこの姫だ」
「あなただけのお姫様よ」
「自分で姫って言うな」
「そんなことどうでもいいから、好きって言ってよ」
「いい加減あきらめれば?」
「いやよ。私は圭兄が大好きなの! とっても愛しちゃってるんだから!」
「ソレハドウモアリガトウ」
「なにその心こもってない感謝!」
「気のせい気のせい。ってか、荷造りあるしお前もう帰れ」
「ヤダ! もうちょっと一緒にいてよ!」
「明日は朝早くに出て行くぞ? 見送りしたいならとっとと帰って飯食って風呂入って寝ろ」
「……見送りは絶対にするわ。もうすぐしたら帰る。だけど、もうちょっとだけいてもいい?」
「ちょっとだけな。いくら同じマンションだからって、暗くなったら危ないし」
「子供扱いされているのは嫌だけど、心配してくれているのはとってもうれしいわ」
「それはようございました」
「ふふふ」
「なんだよ」
「大好きだよ?」
「知ってるよ」
「あきらめてなんてあげないんだからね?」
「好きにすれば」
「――だけどね」
「だけど?」
「もし、もしもだよ? 好きな人ができたら言ってね。彼女ができたら教えてね」
「邪魔でもするのか?」
「違うよ。私は圭兄が大好きだから、とってもとっても大好きだから、圭兄が幸せになってくれるほうがうれしいんだからね?」
「……」
「そりゃ、私が隣にいて幸せって思ってくれるのが一番うれしいけど、そうじゃなくても圭兄が笑ってるとうれしいの」
「……だから?」
「だから、その時はあきらめるね。自信ないけど、でも、ちゃんとあきらめるからね」
「……」
「まあ」
「ん?」
「とっとと私のことを好きになりなさい! そしたらそんな心配しなくていいわ!」
「結局それかよっ!」
「当たり前でしょ。大好きなんだから、ね?」


 現在就活は、本命の最終面接を終え結果待ち。落ち着かなくてソワソワしてどうしようもなくて、ついついアホな話を書いてみたくなりました。超久しぶりの更新が、こんなアホなテンションでごめんなさい。

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