モノローグ・ログ2

掲載日:2010-01-14

自分勝手でも

 好きなんだよ
 好きで好きでたまらないの
 嫌いなんだよ
 嫌いで嫌いでたまらないの

 ねえ、そばにいて
 私を癒すあなたがほしい
 ねえ、消えてほしい
 私を惑わすあなたはいらない

 せめぎあう思いは愛しくて
 憎らしいほど邪魔だった
 全て、ここに置いていったほうがいいのかもしれないね

 気まぐれにあなたを抱きしめては突き放す私
 あなたが好きで嫌いだから
 あなたを殺してしまおう

 そうすれば、私だけのものになる
 そうすれば、こんな想い捨てられる

 私を拒んだあなたが悪いのよ?

いない

 深く深く沈んで
 想いは確かになるの

 強く激しく抱きしめて
 全てをゼロに還すの

 あなたがいない
 あなたにあいたい

 なにも見たくない
 なにも感じたくない

 忘れたくないのよ
 思い出にしたくないの

 それでも

 声を聞かせて
 顔を見せて
 そのぬくもりを感じさせて

 いじわる、しないで

最期の言葉

 悲しみのない世界なんてないんだよ。
 だけど、
 悲しみしかない世界もないの。

 今、どんなにあなたが苦しくて悲しくて痛くても。
 きっと笑える日がくるから。
 幸せだっていえる日がくるから。
 だからそんな顔はしないで。

記憶を奪わないで

 やめてやめてやめて!
 奪わないで、取り上げないで。
 私は彼が大好きなの。
 忘れたくないの。

 少し拗ねた顔で、彼は私に赤い袋に入った物を突きつけてきた。
「誕生日だろ」
 ぼそぼそと、目も合わせずに言う。
 ああ、そうか。今日は私の誕生日だった。
 プレゼントを開けて出てきたのは――、


 ああ、零れた。
 なんだったの? プレゼントは。

「君はさ、自分勝手だよね」
 そんなことを、笑いながら言わないでほしい。
「君のわがままも、久しぶりだと楽しいよ」


 ひさしぶり? どういうこと!
 また、すり抜ける。

 彼は私に背を向けたままだ。
 そのままで、何かを言おうとしている。
 彼は振り向かないし、私は彼を振り向かせる勇気はない。
 重い沈黙が横たわる。
「僕は――」
 低くささやかれた声は、聞きとりにくかった。
「僕は、君を許せない」


 許せない? 私は何をしたの!

 私、彼を好きだったのよね?
 彼はどう思っていたの。
 私を、憎んでた?

 消えていく、零れてく、すり抜けていく。
 忘れてしまう!
 忘れたくないよ。忘れたくなんかない!

「だから」

 声が、遠のく。

「だから、僕は君を――」

 私を、どうするの?
 教えてよ。思いだしたいよ。思いださせてよ!

「君を忘れてなんか、やらない」
 振り向いた彼は、壊れた笑顔で手を伸ばす。
 そして、彼は私の首に手を――、


 彼?
 あなたはだれ?

 私は、だれ?

沈めてしまえ

 思い出す度に「消えろ」と叫ぶ
 暗くて冷たい記憶の欠片
 見ても聞いても吐き気がする
 あたしを責めて痛めつける思い出たち

 誰がほしいと言った?
 こんな思い出は邪魔なだけ
 消えてしまえ
 それが無理なら沈んでしまえ
 あたしが二度と思い出さなくてすむように

 全部沈めてしまえばいい
 重い重い重石をつけて
 もう二度と浮かび上がらぬように
 もう二度と浮かび上がらないでと願いを込めて

 全部沈めてしまえばいい
 全部忘れられてしまえるように

本当の自分?

 本当の自分を探す?
 なに言っているの
 ここにいる私が本当よ
 探す必要なんてないじゃない

 過去も現在も未来も私は私
 他の誰にも奪うことのできないわ

 泣いて怒って傷ついて、そして笑う
 悲しい事も嫌な事も苦しい事も、そして楽しい事も
 全部抱きしめて私は私なの

 月日の中で私は変わっていくだろう
 だけど過去が失われるわけじゃない
 積み重ねて積み重ねて
 私は成長という変化を遂げるのだ

 ここにいる私が本当
 ここまで歩いた私が本当
 ここから歩いてく私が本当

 私が紡ぐ私が、本当

ほしいものは

 永久なる祈りは届かない
 ずっとずっと 声が枯れるほど叫んでも
 決して届かないこの願い

 真実はいらない
 安らぎはいらない
 愛なんて求めない

 手に入れては滑り落ちるものなんて、最初からないほうがいい

 それでも祈り続ける なにを?
 それでも叫び続ける なんのために?
 届かない願いを大切に抱き続けるというの?

 ほしいものは一つだけ
 全てを閉ざせる強さをください
 もう、望みなんて抱かぬ強さを――

言葉にしなかったもの

 信じてる
 そう紡げば、あなたは傷つかずにすんだ?

 愛してる
 そう囁けば、あなたはほほ笑んでくれた?

 行かないで
 そう叫べば、あなたは去りはしなかった?

あなただけ

 報われぬのならばもう何もいらない
 信じられぬのならばもう何も求めない

 この両手が血に染まろうと
 この体が地に這いずろうと
 私は決してあきらめない

 お前を欺き貶めるために
 全てを捨ててかまわない

 憎き人
 何をためらうというの?

 お前は私を裏切った
 お前は私を欺いた
 ならばお前に復讐を誓う私を早く消せばいい

 愛しき人
 それでも惹かれるこの気持ち

 私はお前を求めた
 私はお前を愛した
 ならばお前に全てを捧げた私を嘲笑うがいい

 憎んだ人はあなただけ
 愛した人もあなただけ

叫び

 いつも深い闇の中でその身を震わせていた
 地獄のような記憶が心をかき乱す

 どうして私はこんな運命の下に生まれたのだろう
 いつだって悔しかった

 ただ静かで穏やかな生活がしたかっただけ
 生きていたかっただけなのよ

 そっとしておいて
 そうすれば何もしないから
 力なんていらない
 欲しいのは安らぎなの

 一日一日を恐怖に怯え
 己の罪に涙した

 いつか崩れるこの時を
 どれほど愛しく思っただろう

 何も奪わないで
 もう何も壊したりしないで

 助けてと何度もつぶやいた
 風に溶けたその祈りは
 決して叶えられることはないと知っていても

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